コバケンのシベリウス

10月4日(火)

コバケンとは、指揮者の小林研一郎のことである。前名フィル音楽監督。
現在は、桂冠指揮者である。
その、マエストロ・コバケンと名フィルのコンサートへ行った。

<コバケン・スペシャル>の新たなシリーズ「マイ・フェイヴァリット・
ナンバーズ」という、全9回3年がかりのシリーズの第2回。
これは、彼が最も好んで取り上げている交響曲作曲家を9人選び、回数と
同じ番号のシンフォニーを演奏しようという企画の、2つ目ということだ。

第1回は、マ−ラ−の1番だった。次回は、サンサーンスの3番。御存知
オルガン付き。

と、くれば、あとは、、、どう続くでしょう。
答えを書いてしまうと、

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4番・・・ブラームス
5番・・・ショスタコーヴィチ
6番・・・チャイコフスキー(悲愴)
7番・・・ブルックナー
8番・・・ドヴォルザーク
9番・・・ベートーヴェン(第九)

まあ、順当と言えば、順当かな。
前に、私の音楽の師匠と、「2番はやはり、マーラーでしょう」
「なら、1番はブラームスだね」「じゃあ、4番は?」
「ブルックナーの『ロマンティック』では?」
「じゃあ、7番は?」「ベートーヴェンかなあ」
「では、9番は?」「ドヴォルザーク」「じゃ、8番はどうするの?」
「・・・・」
なんて、会話をしたような気がするけれど、考えれば考えるほど、この
プログラムがいちばんいいような気がする。さすが、プロである。

さて、今日のシベリウス。プログラムは、ヴァイオリン・コンチェルトと、
交響曲2番だったが、期待していたのは、コンチェルトの方。
何しろ大好きで、何人ものヴァイオリニストのCDを持っている。
一番のお気に入りは、ハイフェッツ。若手のハチャトゥリアンのもいい。
フィンランドの凍った大地と、ぴんと澄み切った大気を思わせる、緊張感
のある、かつドラマティックな面も持ち合わせた感動的な曲である。

2番の方は、CDで聴いたり、この間ちょうどやっていたN響アワーで聴いた
りしても、さほどいいとは思わなかったので、きっと寝てしまうだろうと、
思っていた。

ところが、である。2番がよかった。さすが、コバケンマジック。「炎のコ
バケン」と異名をとるだけのことはある。あの(?)名フィルを、自由自在
に操り、乗せまくり、めりはりのある、とっても感動的な演奏を作り上げた。
最終楽章の、弦と管が交互に奏でるメロディがとてもドラマティックに盛
り上がっていくところでは、胸が高鳴った。

コンチェルトの方は、若手の女流ヴァイオリニストだったが、やはり若さを
感じさせた。ハーモニクスというのかな?(よく知らないが)弱い高音で終
わる部分で、ときどき音が乱れた。難曲を、よく弾きこなしていたが、去年
豊田で聴いたレーピンがあまりに素晴らしかったので、その印象が強すぎて、
当分はそれを超えるシベリウスには、出会えないだろう。

そして、素晴らしかったのが、アンコールの「アメージング・グレイス」だ。
本人も言ってたが、渾身の2番のあとで疲れ果ててるマエストロ自らのピア
ノ伴奏で、フルートのソロからオーボエに渡し、チェロ、ヴィオラ、ヴァイ
オリンへと続き、ピアノの独奏へ。そして、またフルート、オーボエへ。

心にしみ入る素晴らしく感動的な演奏だった。思わず、涙がこぼれるほどだ
った。こんなアンコールには、めったにお目にかかれない。

マエストロ・コバケンの人間性、名古屋の音楽ファンと名フィルへの愛情、
そして、音楽へのあふれる情熱をよく表していた、心暖まるいい演奏会だった。
by kimukimulife | 2005-10-05 00:03 | クラシック
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