五嶋龍のパガニーニ

9月5日(水)

e0058731_20111272.jpg久しぶりのコンサート。
宗次ホールのオープニングコンサートではチケットが取れずにあきらめた、龍君のヴァイオリンが聴けるというので、先行予約の日に友人に取ってもらった貴重なチケットである。




五嶋龍・・・ご存知、世界のMIDORIこと五嶋みどりの弟だ。

夏休みに、文庫本になった「母と神童」(五嶋節物語)を読んだところだったし、その前には龍君自身が書いた本も読んでいたので、ナイスタイミングだった。

共演はトスカニーニ交響楽団。指揮者はロリン・マゼール。ヴァイオリン奏者としても素晴らしい、彼自身、かつて神童と呼ばれた人。つまり、古今の神童が共演したという言い方もできる。

プログラムは、

ロッシーニ:歌劇「絹のはしご」より序曲
パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番
ブラームス:交響曲第1番

アンコールは、
パガニーニ:ゴッド セイヴ ザ クイーン(五嶋龍)
ヴェルディ:シチリア島の夕べの祈り

連日の猛烈な残暑の中、暑い暑い職場で肉体労働と言ってもいい仕事を一日したあとのコンサートである。汗まみれでべたべたの身体をシャワーでさっぱりしたいので、ほぼ定時で職場を出る。帰りに夕飯のおかずを買い、義母にあとを頼んで会場へ。途中、忘れてはならないのが、眠気よけのドリンク剤を飲むこと。平日はハードな仕事に加えて睡眠時間は5時間ほどなので、夜は眠くてたまらない。一日10時間歩くとしても、山歩きをしている方が疲れない。年はとりたくないものである。先に何か食べてしまうと眠くなるので、休憩時間にぱくつくパウンドケーキとミルクコーヒーを買ってバッグにしのばせる。

さあ、これで日常を離れて夢見る空間に出かける準備は完了。友人とは現地集合だ。

マゼールは、以前にも2回ほど聴いているが、とにかく流れるように美しく、しかもしろうとの私が見ていてもわかりやすい指揮棒の動きで、自在にオケを操り表情豊かに音楽を構築していくその神業とも言える棒振りに驚嘆したものだった。

トスカニーニ響は初めて。昨年のレスピーギの「ローマの松」がすごかったらしい。ぱっと見て、若い人が多いなあ、という印象。それと、女性が多い。

1曲目は、小手調べ、という感じ。こちらは、早く龍君が聴きたいのでどっちでもいーよ、という不謹慎な聴き方だったし初めての曲だったのであまり印象に残っていないが、マゼールの指揮棒は今日も冴えてるね、という感じがした。

さて、お目当てのパガニーニである。
うちには、庄司紗矢香があるのでそれで予習をして行った。彼女は、パガニーニコンクールで優勝している。

初めに長い序奏があるが、龍君はときおり身体でリズムを取りながら、緊張した様子もなく落ち着いた感じだった。この曲はパガニーニらしく随所に超絶技巧を要する箇所がちりばめられているが、彼は難しさを感じさせず余裕で弾きこなした。

それはそうだろう。何しろ、彼が7歳で札幌のPMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル・・・バーンスタインがアジアでタングルウッドのようなプロジェクトができないか、と考えて始まった)で初めてオケと弾いたのがこの曲である。神童、恐るべし!なんと、7歳でこの難しい曲を弾いたのだ。母親の節さんによれば、「一番難しいのを初めにやってしまえば、あとはこわくないだろう」ということらしい。

必死で弾いている、というのとはほど遠く、むしろ楽しんで弾いている風情の彼の様子を見ているうちに、何故か、ヨーヨー・マやレーピンの演奏を見ているときと同じような感覚を覚えた。
曲をマスターして弾きこなすという段階はとうに超えて、音楽の素晴らしさを聴き手にどう伝えるか、という次のレベルへすでに行っているのだ。彼は、そういうことができる芸術家になっていくんだろうな、という予感がした。

アンコールの曲を演奏する前に「宗次さんへ!」と、大きな声で叫んだが、舞台から客席の中央を指し示しながら言ったので、私の近くにいた宗次さんが、思わず「こちら!」と、手を振っていた。

アンコール曲はすごかった。途中、左手だけで弦を弾くところなど、あまりの凄さに唖然とした。
パガニーニが見ていたら、驚いたことだろう。いや、苦笑いをしたかも?まさか、自分以外にこんなふうに弾ける者が出て来るとは思わなかったかもしれない。しかも、楽しんで。

ブラ1については、詳しくは書かない。何度も聴いている、お気に入りの曲である。が、いつも聴く位置と違ったからか、やけに管の音が大きく感じた。第2楽章だったか、コンマスのソロが入る聴かせどころで、ホルンの音がコンマスの(この日は、女性だったが)ヴァイオリンの音を消してしまって全然せつなくなかったのが、残念だった。

アンコール曲は、初めての曲。アンコールにしては長いな、と感じたが、ヴェルディはあまり聴いたことがないので新鮮と言えば新鮮だった。でも、アンコールの前に席を立つ人が結構いて、ちょっといやだな、と感じた。まあ、あとに、龍君のサイン会が控えていたから仕方ないのかな?DVDを買ったけれど、時間が遅くなるだろうし、終わってから食事に行きたかったのでサインをもらうのは次の機会のお楽しみ、ということにした。

ちなみに、DVDのボーナスビデオは、なかなか面白かった。
五嶋龍。コンクールを制覇して出て来たわけではない。彼の姉と同じく母親が育て上げたユニークな天才である。二人の天才を作った五嶋節という人・・・う〜ん、すごいな〜。
この日も、彼が演奏している間、舞台の袖の小窓からじーっと息子を見ていた。
ステージママも、ここまでになるとレオポルト・モーツアルトに匹敵しますね。
民放テレビで10年間放映されたという、オデッセイという番組。残念ながら、見ていない。DVDで出ないかなあ。
by kimukimulife | 2007-09-06 20:11 | クラシック
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